【人材ビジネス交差点】派遣労働者に深刻な影響/㈱キャリアイノベーション 取締役営業本部本部長 森川 勇
隔週で発行している自社のメールマガジンで、「派遣法改正」に関しての問題提起をよく行っている。昨年の法改正以来、実質日雇派遣ができない状況になっており、雇用する側もされる側も含め、多方面に深刻な影響が出ている。特に深刻なのは雇用される側である。今まで日払いで生計を立てていた方々が、法律が変わったからといって、1カ月に1度の給与で生活をしていくことが果たして可能なのだろうか?日払い・週払いで生活をされていた方々は、それが生活のサイクルになっているため難しいかもしれない。
就労のあり方もひと昔前と違い、今の若者達は長期の安定した仕事を良しとしない方が増えている。例えば、一定期間(おおよそ半年)派遣社員として働いた後、派遣先と本人との合意があれば同じ就労場所で正社員になれる「紹介予定派遣」という方法をみると、良い案件がある場合には登録者の皆さんにご紹介しているが、さほど人気がない。
逆に1カ月程度の短期案件には面白いように応募が殺到したりする。
「働き方」が多様化しているにもかかわらず、的外れな規制で縛ろうとしているのが今の状況である。
ご記憶なさっている方も多いと思うが、2008年12月31日から5日間、日比谷公園で「年越し派遣村」なるものが誕生し、年末に解雇された方々のために炊出しなどを行っていた。
あの忌まわしい秋葉原の事件も2008年。まだほかにもあるが、これだけ様ざまなことが重なると「派遣は悪」というイメージが付きまとう。そこで今回の派遣法改正につながり、直接雇用(正規社員)を増やす目的の下、「原則30日以内の短期派遣禁止」という全く世相が反映されない矛盾だらけの法改正が行われるに至ったのである。
厚労省の調査では、日雇いで働かざるを得ない労働者からも「就業機会がなくなった」「収入が下がった」など否定的な声がめだつという調査結果が出ている。
最近安倍総理が、憲法第1条や農家の所得に触れたコメントをしているが、労働人口の大多数である、我われ一般労働者や非正規社員が「恩恵」を受けられる政策をもって、是非アベノミクスの完成としてほしいものである。
筆者:㈱キャリアイノベーション 取締役営業本部本部長 森川 勇