介護事業に高齢者活用を/あかり社会保険労務士事務所 上村 雪
平均寿命が男性80歳・女性86歳となり、世界第1位の高齢化社会への対応が様ざまに取りざたされる中、「働く価値観」が見直されている。定年(60歳・還暦)後、30年近くを生きることとなり、悠悠自適にのんびり暮らすには長すぎる時間である。
50年前(前回東京オリンピック)、100歳超の人口はわずか153人に過ぎなかったが、昨年は5万8000人である。医療技術の進歩、栄養状況の改善、公衆衛生の向上が要因として挙げられるが、急速な高齢化を象徴する驚異的な数字である。
さらに、いわゆる団塊世代(現在65歳)が10年後に75歳となり、後期医療制度の対象になれば介護ニーズも一層高まることが予想される。このまま推移すると年金・医療・介護問題が日本社会の根幹を揺るがすことになるのは必定である。
しかし、平均寿命の延びに象徴されるように高年齢者の健康寿命も延びている。よくいわれる年齢8掛け論では「75歳×0.8=60歳」となり、60歳=定年思考は過去のものである。つまり元気で健康な高年齢者が多数存在するのである。隠れた再生可能な労働力資源である。
高年齢者が「働く」ことの価値観(社会貢献・社会参加)を重視した働き方が健康寿命の維持延長にも効果が大きく、毎年1兆円増加し、今年度30兆円に上る医療費(国家予算)抑制の効果も期待される。
そこで一考として、医療介護事業等で高年齢者を労働力として活用し、企業に地域社会に貢献してもらい、支えられる側から支える側に回ってもらうことはどうであろうか。還暦後の60~75歳までの15年間は後期高齢者を支える立場、そして75歳超は支えられる立場とし、現役世代に頼るだけではない、高年齢世代相互の自助努力が可能な仕組みづくりである。
60歳以降30年近くを生きるためには、高年齢者自身が自分のライフプランの中で、「働く」ことを「生涯現役テーマ」とし、第1定年後の第2の人生も「働く」ことが社会貢献であり、健康維持、生きがいであるとの「働く価値観」を持つ必要がある。また高年齢者自身が第2の人生に「どのような仕事」を持つか、「何ができるか」を考え、事前に準備しておく必要がある。
あかり社会保険労務士事務所 上村 雪【茨城】
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