訴訟リスク増大に対処/榎木社会保険労務士事務所 榎木 隆志
当事務所は、今年で社会保険労務士登録19年目。来年は人でいえば成人式の20年目を迎える。私が成人にふさわしい成長を遂げることができたかどうかは分からないが、社会保険労務士として歩んだ19年を振り返りつつ、今後のめざすべき方向性について考えてみたいと思う。
我われ社会保険労務士やその顧客企業を取り巻く状況をみると、私の開業当時とは大きく変貌している。
企業を取り巻く変化としては、就労可能労働者の高齢化、メンタルヘルス不調の増加、働き過ぎ・ブラック企業問題の表面化、労働者の権利意識の変化に伴う労働紛争訴訟リスクの増大がある。事務所運営上の変化としては、IT技術の劇的進化に伴うインターネット申請手続きや書類のペーパーレス化のほか、マイナンバー導入による顧客情報のセキュリティー強化など。将来に目を転じれば、TPP(環太平洋経済連携協定)に伴う法律専門家の相互乗入れも今後気になるところだ。
開業当初は、得喪や給付などの提出代行や助成金申請等の書類作成が主な業務を占めていた。顧客の相談内容も解雇や休職などの具体的な取扱いが大半を占め、企業のリスク・ヘッジの領域まで踏み込む事案はさほど多いものではなかった。言葉を換えれば、起きてしまったことに対応する臨床医療が大部分だったといえる。
しかし、今後は医療でいえば予防医療。顧客や事務所に起こるであろう事態を予測し、予防する予見性が求められるのではないだろうか。
申請等の作成提出代行業務は、マイナンバーやネット申請による直接申請の簡便化が進むことによって、企業のアウトソーシングの必要性低下は避けられないだろう。それに代わって、今まではほとんど大企業が対象だった労働紛争の訴訟リスクは、中小零細企業でも増大の一途を辿るものと思われる。
企業の日常業務に深くかかわり、それを踏まえて人事労務の助言を行うことができるのは、社会保険労務士をおいてほかにはない。
関連士業と重なることのないこの分野こそが、今後我われ社会保険労務士に強く求められるものであり、成人を迎える当事務所が進むべき道であると考えている。
榎木社会保険労務士事務所 榎木 隆志【広島】
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