雇用契約書が会社を守る/社会保険労務士折原事務所 折原 麻衣子
平成20年に開業登録してから、はや7年が経った。7年経った今も、まだ経験したことのない手続きは多々あり、関与先からの相談に即答できないことも度々ある。
社会保険労務士の業務は扱う領域が幅広く、すべてに精通することはなかなか難しいと日々痛感している。だが、いつかベテラン社労士になれるよう勉強の毎日である。
今まで社会保険労務士業務をしてきたなかで、中小零細企業の中には、就業規則の作成をしていなかったり、雇用契約書を書面で交付していない事業所がまだまだあるということを知った。
事業主が人を雇い入れるということは、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約束し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約束する契約」(民法623条)であるということがあまり浸透していないのかもしれない。あるいは、従業員を信頼して、苦情をいったり、労働基準監督署へ相談に行くような従業員はいないと思っているのかもしれない。しかし、労働者が2人以上になるとやはり組織であり、一定のルールは必要なのだと思う。
現実に、トラブルになるのは、給与、所定労働時間や休憩、休日などの労働条件に関することが多い。従業員を雇い入れる際、つまり雇用契約を締結するに際し、労働条件を明確にしたうえで、労働者が納得して契約に応ずるのであればトラブルは少なくなってくるだろうと思い、関与先に対しては雇用は契約であるという話をしている。
事業主、労働者がそれぞれ約束(義務)をきちんと果たすことにより、雇用契約は成り立っているということも加えさせてもらっている。
給与計算を請け負うこともあるが、やはり賃金規定などが整備されていないと、その都度その都度事業主に確認することとなり、また、明文化されていないことから人により対応が異なることもあり得る。
昔は、小さな会社であれば個別に対応をしていれば問題とならなかったのかもしれないが、残業代の支払い、サービス残業などがマスコミなどで報じられるようになった現在では、会社を守るためにも就業規則、雇用契約書の作成が必要だと感じている。