小企業のコア人材養成支援/丹保社会保険労務士事務所 所長 丹保 敏隆
就業規則もないような小規模企業経営者とマイナンバー法施行や労働基準法改正案などについて話しているうち、「経営全般についての相談相手が必要」とか「自分の片腕どころか分身がほしい」という話になることがある。売上げを伸ばすチャンスなのに人材が足りないという現実と、事業の展開に向けた社長の想いが従業員に伝わらない悔しさがそこから感じられる。
産業のサービス化といわれるとおり、市場での第三次産業のウエートが高まっていることはもとより、第一次産業・第二次産業においても、商品価値が、本来のモノが持つ価値からコンセプトやデザインなどソフト面にシフトしてきている。そして、製造の場で仕事に携わる者に対しても、それをわきまえて働くことが求められている。
一房1万円の値が付くルビーロマン(石川県で作られる大粒のブドウ)はヒトの想いがなくては生産できない。いくら大声で「夢」を叫んでもそれだけでは「法螺」に終わり、一歩踏み出して夢に近づき、想いを新たに持続することが難しい。いま、企業においていかにこの想いを共有して前に進むかがヒトづくりの原点になっている。
想いを伝える言葉として経営理念を示し、経営方針・計画が具体化されるが、目の前の作業に捉われては想いに至らず、些細なことに口を挟まざるを得ないのが小規模企業の経営者であり、だからこそ自らの分身がほしくなるのだろう。
人材育成のために経営者が割くことのできる時間はわずかしかないが、経営者の言動は全てが人材育成につながることも、従業員が接する時間の多い小規模企業では当然のことと理解されている。むしろ、経営者自らが体系的持続的に人材育成に取り組むことが難しいのであり、従業員に仕事の中にある人材育成の仕組みを示すに至らないことが問題だと考えられる。
そして、経営者が日頃の業務の中で自らの想いを言葉にして社内のコア人材を養成し、彼らの役割として部下育成を担うべきことを指導し支援することは、社会保険労務士の責務である。人事制度のPDCAサイクルにおいて、評価制度や賃金制度を構築しながら人材の採用や育成に関して成り行き任せに終わらせては、システムの機能不全に終わってしまう。
丹保社会保険労務士事務所 所長 丹保 敏隆【石川】
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