THPとストレスチェック/大田晶子社労士事務所 大田 晶子
私は労働衛生コンサルタントと精神保健福祉士の資格を有しており、メンタルヘルス対策に職場環境改善の視点で取り組んでいる。
50人以上の事業場でストレスチェックが義務化される。ストレスチェックが導入された理由の一つは、ストレス評価を行い、職場環境改善を行うことである。
しかし、最近の傾向では、働き過ぎや責任の重い仕事を任されている労働者以上に、社会人基礎能力の低い(たとえば、生活習慣が確立されていないために朝起きられない、または子供の頃から運動習慣や食事への意識が低い等で体力がない、働くということへの心構えがない等)労働者のほうが、仕事に対するストレス度が高く、大きな問題になっている企業も多いのである。
職場環境の改善に取り組む場合には、ストレスが過重労働によるのか、仕事をする上での基礎能力不足によるのかを分析する必要がある。原因によっては企業がなすべき対策が大きく変わる。ストレスチェックでは、あくまで本人の主観に基づくストレスが数値として出てくる。ストレス結果を正しく分析するためには、ストレスチェック以外の何らかの修正ツールを利用する必要がある。
THP(トータルヘルスプロモーションプラン)に目を向けてはどうだろう。労働安全衛生法で昭和63年から導入が推奨されているもので、定期健康診断時等に、産業医等が健康測定(問診・生活状況調査・診察および医学的検査)を行い、その結果を基に、運動指導・勤務状態や生活習慣の改善を指導する保健指導・食生活や食行動の指導、または心理職等によるメンタルヘルスケアを行う。
健康測定の結果を、ストレス結果数値の補正資料として利用することで、労働者のストレス要因がどこにあるのかを、産業医に適正に判断してもらえるのではないだろうか。その結果を人事が労務管理に生かせば良い。
ストレスチェックそのものは単なるアンケート数値に過ぎない。結果を労務管理に生かすためには直接人をみるしかないのである。労務管理に手抜きは禁物である。手抜きをすれば、結局手を取られるはめになる。企業リスクを防止するために、あらゆる視点からアドバイスできる社労士でありたいと考えている。
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※タイトルの社名は連載時のものです。