人材育成の強化で復興を/社会保険労務士法人田口事務所 田口 斉
全国的に人手不足が叫ばれているなかで、復興途上の岩手県にあってはさらに切実な問題となっている。弊所のお客様からも、「仕事の依頼がたくさんあるのに人手がなくて断っている」、との嘆き節をよく聞かされる。
岩手労働局によれば、岩手県の有効求人倍率は、今年8月期で1.27倍(求人2万9476人、求職者数2万3273人)に上る。震災発生前の平成22年平均の有効求人倍率は0.46倍(求人1万5880人、求職者数3万4812人)にすぎなかったが、いまや平成4年2月期の1.30倍に迫る水準である。まさに仕事あって人足らずの状況だ。
求人数は、震災前年の平成22年8月以降の5年間で86%増加した。
行政による復興事業の創出や各種補助金の交付等の諸施策によって、地元企業の雇用需要が増大しているのは間違いない。しかし増加した求人のうち正規雇用は4割に過ぎず、しかも資格や特定のスキルを要求される専門職に集中しているのが現状だ。増えた雇用は非正規ばかりといってもいい。
一方、求職者数はわずか5年間で33%も減少している。
順調に就業が決まれば求職者が減るのが道理だが、震災被害や少子化という要素を加えても減少率が高すぎではないか。そのうえ、直近1年間においては、就職者数が減少している。これは一体どういうことだろうか。
その理由として、①どうせ非正規の仕事にしか就けないならば、少しでも賃金の良い大都市へ移転する派(以下「流出型」)、②正規雇用に就けるよう資格取得などのスキルアップに励む派(以下「スキルアップ型」)、③就職活動を当分しないまたは就職そのものを諦める派(以下「諦め型」)の3つの流れがあるように考えている。
諦め型はともかく、流出型、スキルアップ型の2つの類型の方々にはなんとか長く地元復興の大きな力になっていただきたいと思う。
震災からの4年半余で建物や機械・設備等の産業基盤はある程度整ってきた。仕事も増えた。あとは、マンパワーである。行政機関各位には、人材育成のための施策、援助を一層望みたい。
社会保険労務士法人田口事務所 田口 斉【岩手】
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