【主張】転換期に来た高齢者雇用
わが国の高齢者雇用が転換期に差し掛かっている。厚生労働省が、65歳以上の高齢者をターゲットとした雇用・就労環境の整備に本腰を入れ始めてきた。人口・労働力減少が急激に進むわが国において、高齢者の活用範囲が60歳代前半から後半に拡大しつつある。
企業としては、厚労省の政策転換を契機として、個々の健康状態を勘案した効率的な高齢者活用に目を向けるべきである。一億総活躍社会をめざすなら避けて通れない課題である。
来年度、厚労省はハローワークにおいて65歳以上の高齢者の就職支援を重点対象とする「生涯現役支援窓口(仮称)」設置を予定しているほか、新たに雇用保険制度の適用対象に含める法改正を検討中だ。
地方のニーズを踏まえた雇用機会の掘り起こし・提供を行う「生涯現役推進地域連携事業(仮称)」やシルバー人材センターを活用した「地域就業機会創出・拡大事業(仮称)」もスタートさせるという。
とくに、従来から懸案事項の1つだった雇用保険制度の適用は、65歳以上の高齢者が労働市場に本格的に参入し始めたことを強く印象付けるものである。
約30年前と現在の高齢者雇用状況を比較すると隔世の感がある。65歳以上の雇用者数は、昭和63年の71万人に対して平成26年には320万人に拡大した。引退希望年齢を「65歳以下」とする割合は、昭和55年の71%から平成25年に51%にまで下落している。
65歳以上の新規求職者数は平成2年の8万4000件から26年には43万1000人に膨れ上がった。
雇用保険制度は、一定程度の母集団形成によるリスク分散で運営が保たれるものである。65歳以上の雇用者が300万人以上存在するということは、適用条件に近付いたといっても差し支えない。失業という現象が、65歳以上の高齢者にとっても特別なものではなくなってきた。65歳以上の高齢者を一定割合雇用している企業への新たな助成措置も予定しているという。熟練労働力である高齢者を上手く利用して企業の維持・発展につなげたい。