【主張】危惧される選挙後の雇用
衆議院解散により、今後の雇用・労働情勢に及ぼす影響が懸念される。軌道に乗ってきた有効求人倍率の大幅上昇、失業率の低下、働き方一括改革の流れなどを、ここで止めてはならない。どのような政権が誕生しても、これまでの成長戦略を踏襲したうえで、さらなる改善の道を探る姿勢で臨むべきである。
とくに焦点となるのは消費税増税問題である。政権側から消費税増税を実施し、その増税分を教育無償化など再分配の強化に充てるという方針変更が打ち出された。
しかし、2014年4月の消費税増税(5→8%)に伴う個人消費の落込みと、その後長く続いた後遺症を再度思い返してもらいたい。同年前月までの駆込み需要の反動もあり、4月の実質消費支出(住居等除く)は前月比13%を超える大幅下落となり、未だにその影響が影を落としている。当初、数カ月後に回復すると観測されていたが、予想外に大きな後遺症を背負ってしまった。
選挙後の新政権誕生で、消費税増税が正式に打ち出され、実行に移された場合、ようやく後遺症から脱却しようとしている個人消費に再び冷水を掛けることになりかねない。雇用情勢の改善や賃金上昇トレンドに多大なマイナスのインパクトを与えてしまう可能性が大きい。
救いは、消費税増税の予定時期が19年10月とまだ2年間あることだ。企業はそれまでに、大幅賃上げを確実に実施して、前回のように増税による個人消費の長期的低迷を招かない経済体質を醸成しておく必要がある。また、消費税凍結を主張する有力な新党が形成されたことも注視していきたい。
政府の国民などからの借金は今や1000兆円を大きく超えており、将来的には解消の方向へシフトしていく必要があろう。ただし、増税によってデフレに再突入し、縮小再生産に逆戻りすれば、その増税分のほとんどは打ち消しになって借金返済どころではなくなる。
いずれは増税するとしてもそのタイミングを慎重に計って、最小限のダメージに留めるべきである。