「適度な距離感」大切に/森川由美子社会保険労務士事務所 森川 由美子
社会保険労務士は、しばしば「ヒトの専門家」と呼ばれる。人事労務管理の専門家として、人に関する管理業務のアドバイスやサポートをしていく上での事務処理能力はもちろん必要だが、同時に、人の悩みや要望を聞くことができるコミュニケーション能力も必要であると思う。企業と労働者の両方にとって、良い解決策を提案するためには、人の気持ちに寄り添える力、話の中で相手のニーズを汲み取る力が必要だ。
過去に、ある従業員さんと話をした時のこと。その方は、周りの社員との関係を遮断し、ただ自分の仕事を淡々とこなすという、周りから少し距離を置かれてしまうタイプの人だった。しかし、1対1で話をしてみて分かったことは、彼女には彼女なりの考えや要望がきちんとあること、そしてそれらを伝えられる場や人が周りにいなかった、ということだ。まっすぐ私の目をみて、笑顔で思いを伝えてくれたことが、とても印象的で今でも忘れられない。
職場で働く人々の大半が人間関係に悩み、コミュニケーションに苦手意識を持っているという調査結果を目にしたことがある。先ほどの彼女の例をとってみても、おそらく「ここの職場ではこうあるべき」、「分かってくれて当たり前」という、周りからの一方的な、距離を近付けすぎたコミュニケーションがあったのではなかろうか。一方で彼女の方は、遠慮をしすぎて周りとの距離を遠ざけ、自ら関係を断つ行為をしてしまっていたのだと思う。
職場において良い人間関係を保つためには、一方的に思いを伝達するのではなく、分かち合える、共有できるコミュニケーションを取ることが大切であり、近すぎず、遠すぎない、相手との適度な距離感も必要なのであろう。
かくいう私は、私生活において、思春期真っ只中の子供とのコミュニケーションに日々奮闘している。
「いつまでもゲームをしていないで勉強しなさい」、「何回いったら分かるの?」と相手の課題に土足で踏み込んで、命令口調になってしまう。しかし、これでは良好なコミュニケーションがとれず、子供も反発する。良い関係を保つためには、程良い距離感が必要であると痛感している。
社労士として人の話を聞く時でも、相手のニーズを汲み取っていく上で、相手の言い分を聞き、分かち合う。そして合意点を作っていく。「適度な距離感」を意識しつつ、そんなコミュニケーションが自然とできるようになりたいものだ。
森川由美子社会保険労務士事務所 森川 由美子【広島】
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