【ひのみやぐら】自分の組織を見つめ直す
人間の集団ができると、それなりに個性がでてくる。分かりやすい例でいえば、プロ野球チームがそうだろう。同じように、企業にも社風があり、さらに職場ごとに個性がある。「あの部署は、話が通りやすい」「○○課は堅い」など日常会話でよく使っていることだろう。組織といっても、人の集まりである以上、性格や癖などは隠しきれるものではない。
メンタルヘルスに話を移すと、悲しいことながら、不調者が出やすい組織が少なからず見られる。労働時間管理ができていない、上司の指示が伝わらない、部下とのコミュニケーションが足りない――などメンタルヘルス不調者が現れやすい組織の特徴は、ある程度評価が定まっている感がある。このような組織に所属していれば、せっかく体調がよくなって復職できても、再びメンタル不調に陥るのは明らかだ。
今号から3回にわたって特集Ⅱで執筆いただくランスタッドEAP総研の川西由美子所長は「1人の行動不全、メンタル不全を治そうとするなら、まずは組織の機能不全を見て介入すべき」と指摘する。子供の素行が悪いのは家庭環境に問題があると考えるように、メンタル不調者1人に焦点を当てるのではなく、組織全体に目を向けるとしたわけだ。
人間が罹る病気は早期対処が効果的であるように、組織の病理も早めに手を打つことが重要だ。川西所長は、まずはグループを作り、組織の中の困り事、機能不全と思うところを語り合うとしている。病巣はどこにあるのかをしっかり見定めて共有し、自分たちはどんな問題を解決したい集団なのか、ハッキリとすることが大切とした。
心が動くような組織風土をつくるには、周囲へ興味を持つことが大事としている。相手を知るためには、自分が声をかけて「心の窓」を開けるよう求めた。なお、どのようにしたら相手から心の窓を開けてもらえるかは、次号までお待ちいただきたい。
個という点ではなく、組織という大きな視点からアプローチするメンタルヘルス対策。自分の所属する組織は、どういう傾向があるのか見つめ直すのもいいのでは。