【見逃していませんか?この本】自然体になった2010年代落語の魅力/広瀬和生『柳家三三、春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、三遊亭白鳥「落語家」という生き方』

2016.02.25 【書評】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 本書は、ロングインタビュー付の落語会“この落語家を聴け!”のインタビュー部分をまとめたものである。2012~13年に開催した会をシーズン1、14年~15年開催をシーズン2とし、両シーズンに出演した5人の若手真打落語家のインタビューを収めている。聞き手は、本書執筆者でもある広瀬和生氏。

 筆者は、「もはや(中略)落語はごく当たり前に娯楽の一つとして存在する。気に入ったものを好きに楽しめばいい」とし、2010年代の落語は2000年代の落語に比べて肩肘張った空気感がなくなり、自然体になったと指摘する。ともすれば落語をよく知らない人が持ってしまいがちな、「落語は難しい。敷居が高い」という認識は該当しない。

 インタビューの内容は五者五様といえる。たとえば、春風亭一之輔の1度目の出演は、「21人抜き・抜擢・単独真打披露興行」を終えた直後のもの。落語家になるまでの経緯などにも触れている。

 弟子入り志願の際の師匠・春風亭一朝とのやり取りも面白い。この点、ちょうど『ダヴィンチ・2016年2月号』に掲載されている「一朝・一之輔師弟対談」のなかで一朝師匠のコメントが載っており、興味を持たれた方は是非、お読みいただきたい。

 “この落語家を聴け!に出演した落語家の中からこの5人をセレクトしたのは、まさに「10年代らしい肩肘張った空気感がない」からだろう。もし私が、落語を生で聞いたことがない人を落語会に誘うとしたら、この5人が出ている会にするだろうから。

 ゆったりと楽しめる落語を演る5人がどういう人間なのか、落語“御通家”の人はもちろん、そうでない人でも十分に読み物として楽しめる――そんな1冊である。

 最後に、今、都内を中心に全国各地で毎日10や20では収まらない落語会が開かれている。ふらっと訪れてみては?とオススメしておこう。(M)

ひろせ かずお、講談社・1836円/ヘヴィメタル専門紙『BURRN!』編集長、落語評論家。『この落語家を聴け!』『なぜ「小三治」の落語は面白いのか?』など。

Amazonで購入する

関連キーワード:
    • 広告
    • 広告

    あわせて読みたい

    ページトップ
     

    ご利用いただけない機能です


    ご利用いただけません。