【ひのみやぐら】「見える化」で現場力向上
建設業の人手不足の深刻化については、7月1日号のひのみやぐらで指摘した。人手不足は全国的な傾向だが、とくに東京労働局管内では、それが一因による労働災害が増えている。工事量の増加が主な要因であるのはもちろんだが、背景として若い作業員や異業種からの転入による経験不足の者への対応が課題とされている。
東京・中央労働基準監督署では、労働災害の増加傾向に歯止めをかけるべく7月15日に「決起大会」を開催した。この中で村田泰昌署長は、経験不足の作業員に対して「安全の見える化」が有効であると指摘している。同感だ。
今さら説明するまでもないが、職場に潜む危険など視覚的に捉えられないものを可視化するのが見える化。危険認識や作業上の注意点を目で見て分かりやすく示しているので、労働者が参加しやすく厚生労働省でも強く推し進めている手法だ。一例としては、カラーコーンの色分け配置や工事用機械の点検報告ステッカーなどがある。こうした直感的に理解できる仕組みが今後、安全対策に多く取り入られることが必要だろう。
未熟さが原因といえば、新規入場者の労働災害も少なくない。現場のどこに何があるか把握するのは、どうしても時間がかかるもの。自分たちのいる位置をきちんと理解しているのか、いささか心配になる場面に出くわすこともあるだろう。こうした人たちのフォローをしっかり行うためにも中央労基署は「一週間は目をかけてほしい」と決起大会で呼びかけた。
団塊世代の大量退職、労働者の高齢化などにより、建設業では”現場力”の低下がささやかれている。強い現場を取り戻すためにも「見える化」を強力に進めたい。