【ひのみやぐら】「間違える」背景を知る
リスクアセスメントなどの普及で、ハード面の安全対策が進みつつある。残る課題としては、ヒューマンエラー防止があげられる。本年第一回目の特集では、安全職場への最後の〝難所〟ともいえるヒューマンエラーについて取り上げたい。最も大切な考え方として、「人は誰でも間違える」ということだ。安全マネジメント研究所の石橋明所長は、その背景と仕組みを理解したうえで、事故につなげないための〝防護壁〟を備えることが必要と指摘する。
今号では、まずヒューマンエラーが起きる背景を示した。一例をあげると「近道行動」がある。たち馬から下りる際、踏さんからではなく天板から下りて足首を負傷するケースがこれに当たるだろう。一見、被災労働者のルール違反などと済ましてしまいそうだが、こうした省略や手抜きとみられる行為にも「人間の基本的特性」があるという。石橋所長は仕事をする時に、なるべく自分の力を温存して、しかも最良の結果を得ようとする特性があると述べている。なぜ、エネルギーを温存するのかといえば、自分の身に危難が降りかかってきた時に、瞬発力を発揮して避難するためだ。
太古、人間が狩猟で生活していたころは、肉食獣に襲われる危険があった。運悪く遭遇してしまった場合、とっさに逃げなければならない。そのため、常に最小の力で最大の結果を出すことが求められてきたとしている。人類の歴史からすれば、産業社会の始まりは、つい最近といってよい。ましてや今日の「会社生活」となると数時間前の出来事だろう。
このような背景がある限り、個人の能力には限界があるとし、組織的な取組みの構築が必要になるのだが、その内容は次号までお待ちいただきたい。乞うご期待。