【ひのみやぐら】運転者に魅力ある職場を
将来、生鮮食品が運べなくなるかもしれない――ある労働局の担当官が運送事業者から聞いたショッキングな言葉だ。前号ニュース欄で、厚生労働省と国土交通省で「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」を設置し、トラック運転者の長時間労働防止を目指す取組みを紹介した。トラック運転者の過重労働は、すでに社会的問題であるが、それを敏感に感じとっているのは若者だろう。
景気回復によって人手不足が叫ばれているトラック業界だが、とくに中高年の占める割合が高く、中長期的には深刻な状況が懸念されている。背景には、長時間労働や低賃金、さらには労働災害の増加などの問題が山積みとなっている状況がある。こうした若者の嗅覚は中高年が思う以上に鋭く、入職の妨げになっていることはいうまでもない。近い将来、新鮮な野菜や魚が食卓に上らなくなるということは案外、大げさな話ではないかもしれない。
厚労省もこうした状況を放置しているわけではない。国交省と手を組み、このほど連絡会議を開催し、トラックドライバーの人材確保・育成に向けた対応策を取りまとめた。「魅力ある職場づくり」「人材確保・育成」の2つの視点からアプローチするのが特徴だ。「現場の安全管理の徹底」「長時間労働・賃金などの労働条件の改善」に注力するのが「魅力ある職場づくり」で「人材確保・育成」の観点では、国交省がガイドラインの策定に乗り出す。実態調査を実施して好事例集を作成。育成の進め方や離職防止のポイントなどをまとめる。
物流が滞るようなことになれば、市民生活に大きく影響する。トラック運転者の人材育成と安全対策は「待ったなし」だ。