【道しるべ】自己安全義務 履行を強く迫ることも必要

2013.01.15 【ひのみやぐら】
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 いつになく厳しい冷え込みがつづいている。気象庁の予報によれば、寒気がゆるんで平年並みの気温となるのは3月になってからだという。あと2カ月余、寒冷による事故災害の可能性もより高まるだろうから油断がならない。健康面では、通常にましての自己管理が求められる。

 そんなあれこれを考えていた折、ある企業の安全担当者から、「作業者に喝を入れて、気を引き締めるような方法とか話しはないか」との相談を受けた。別に冬場の労働環境がどうこうというのではなく、安全意識を刺激するような〝災害の怖さ〟を訴えられたら、というのである。背景には、安全を軽く見ての不安全な行動や動作、ヒューマンエラーの類、いまひとつ盛り上がらないモチベーション等々への苦慮が窺えた。他の事業場でもよく耳にする悩みである。

 相談者には、「被災(とりわけ重度の障害を負った)後の生活がいかに悲惨であるか」、「災害によって痛い目にあうのは、いっとき自分だけとは限らず、家族などにも苦労を強いるもの」、「安全に対し消極的あるいは危険に無警戒でいると、その気の緩みを突くように災害が起こる」ことなどを具体例をもって教えアピールしてはどうかと話し、「労働者にも安全義務がある」旨も付け加えてさせてもらった。

 電話でのやり取りだったため詳細には及ばなかったが、この中でふれた「労働者の義務」云々については、あまり顧みられないきらいがあるから、小欄をかりて少し説明しておきたい。

 ご存知のように労働安全衛生法では、事業者に労働者の安全と健康を確保するための様ざまな措置を義務付けている。これに対し、保護対象となる労働者が(自身の)労災を防止する義務を負うといった規定はない。義務としては、同法第26条において「(事業者の)講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない」とされているだけである。これが安全措置順守義務、自己安全義務といわれるものだが、それが果たされなければ、いかに事業者・使用者の措置が十全でも安全の確保は期し難い。

 つまり、災害防止には労使の協力が不可欠で、安全確保の責任は労使双方が負っているともいえるのである。「自分の身は自分で守れ」とまでは言わないまでも、「安全は措置されるもの」という無自覚な人まかせの風潮がなきにしもあらずである。自職場などでそうと見てとれるときがあった場合には、「自己安全義務は自分自身を護るうえでの戒律」だとして、強く履行を迫ってもいいのではないか。

平成25年1月15日第2178号 掲載
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