団体交渉に臨む心構え/弁護士 荒瀨 尊宏

2016.02.15 【弁護士による労務エッセー】
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3 ネガティブな発想からポジティブな発想への転換

 団体交渉に関する私の基本的な考えとしては、使用者側は団体交渉に積極的に応じた方がリスクは少ないと思います。実際、団体交渉を拒否できる「正当な理由」というのは極めて限定的なもので、むしろ団体交渉を拒否することはできないと考えた方がよいくらいです。

ただ、使用者側の発想として、団体交渉は拒否できないから応じるというネガティブな発想ではなく、団体交渉の申入れがあったことを会社の労務管理を見直すよい機会とポジティブに受け取ることはできないでしょうか。

 すなわち、団体交渉の申入れがあったということは、大なり小なり使用者側は何らかの労務管理上の問題を抱えていることを意味します。団体交渉の内容が残業代の支払いを求めるものであれば労働時間の管理に問題があったのかもしれませんし、配転や解雇の撤回を求めるものであれば、対象となった労働者への配慮を欠く対応があったのかもしれません(労働契約が人格を有する労働者の労務提供を契約の対象としている以上、感情的なものも含めて、使用者側は真摯に対応すべきでしょう。)。

 多くの使用者は団体交渉の申入れを受けることをとんだ災難だと思うかも知れませんが、会社内の労務環境を見直すよい機会だと考えるべきでしょう。

 企業は永続することを前提としています。そうすると、目の前の問題をとりあえず片付ければよいという発想ではなく、今回の労使紛争を今後の労務管理に如何に活かすかという視点も必要なのです。

 勿論、労働組合に迎合したり、労働組合の要求を何でも受け入れろと言っているわけではありません。使用者側において主張すべきことはしっかり主張すべきですし、労働組合の行き過ぎた態度には断固抗議すべきです。実際、「そんな大きい声出さなくてもいいのに。」とか、「机を叩かなくてもいいのに。威嚇してるつもりですか?」などと、労働組合側の態度に疑問符が付くこともままあります。交渉ですから多少の駆け引きはありなのでしょうが、仮に労働組合の不穏当な言動が使用者側にとって団体交渉に応じることを躊躇させる一因となっているのであれば、それは労働組合側も反省すべきところです。

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