【道しるべ】小規模事業場 〝分かりやすい安全〟がポイント
産業医科大学産業保健学部の池田智子教授が小規模事業場の安全保健活動について次のような指摘をされている。「業種、経営状態、職場風土、従業員構成等の多様性が極めて大きいという特徴を持つ小規模事業場には、大企業向けの対策を導入するのは難しく、各事業場に合わせた活動を専門家が側面から支援する参加型安全保健活動が最適である……」。
参加型活動とは、事業主と従業員自身が主体的に課題を抽出して(職場安全衛生)活動の選択・実施・評価などができるようになるための支援を継続的に行っていくもので、「活動開始のきっかけをつくる」ことと「安全衛生体制が構築されるまでのスモールステップの支え」がポイントとなっているとか。
労働科学研究所発行の月刊誌『労働の科学』(2月号)での池田教授の論稿には、14事業場における2~4年にわたる保健関係を主とした活動例の概要紹介もある。その実施効果については「安全保健とは言い難い些細な活動であっても、それを従業員自身が話し合って実行したという初の体験を褒め支えることで、次年度からのより高度な活動に繋がっていた」とし、「年に1度でも専門家が(事業場を)訪問し、成長を評価し、また新たな提案等の助言を行うことは、モチベーションの維持や活動のマンネリ化を防止するためにも有効であった」ほか、副次的にはコミュニケーションの改善とか一体感の醸成が従業員間に見られ、「職場の活性化が顕著」と記述されている。
小事業場に赴いての安全衛生指導に関して「現場実態に適合した支援を心がける」という話は、埼玉の社会保険労務士・中山貞男さんからも伺うことができた。中山さんの場合も大手企業向きとは違う自作の簡易な資料や教材を話合いの糸口として活用しながら、管理活動のスパイラルアップを図るべく苦心と工夫を重ねていらっしゃる。説明資料のうちの「職場の法令点検―安衛法令チェック表」や「実践テキスト」は、現場確認と重点管理・指導事項決定に欠かせないだけでなく、自職場と法令との絡み、あるいは災害防止への実施内容、労働災害防止のメリットなどが分かりやすくまとめてあるため、「これなら取り組めるのではと、関心を示してくれるところが多い」のだという。
両例には、とかく「人、お金、時間がない」を理由に安全衛生を後回しにしがちな事業場であっても、専門家による簡にして要を得た適切な助言・指導があれば、無関心からの方向転換が可能と窺わせるところがある。