【主張】若者対策で確実な成果を
厚生労働省による若者雇用対策の推進が本格化してきた。第2新卒の採用を促進する奨励金創設などを柱とする平成27年度補正予算の執行が始まるとともに、今後5年間を見据えた「正社員転換・待遇改善実現プラン」がまとまった。同プランは、若者の雇用拡大へ向けて、考え得る各種の数値目標を設定・宣言したものと考えられ、中長期の若者対策の指針となろう。
しかし、最大の懸念は、同プランが打ち出した数値目標実現について何ら保証がないことだ。難しいとされる同一労働同一賃金の推進にも言及しているが、多数の耳触りの良い目標を並べるだけ並べて、その達成に責任を負う態勢が明確になっていない。
そうであるならば、最低限、政府は同プランに設定した目標をどんなことがあっても実現させる意気込みで事態に当たってほしい。わが国の将来を背負う若者たちの雇用環境改善への思いは全国民共通である。
今年は、7月に国政選挙がある。当然、政権を担う与党としてはできる限り多くの議席を確保しようとあらゆる分野において積極策を打ち出し、アピールを始めた。選挙年齢を18歳以上とする初の選挙になると考えられ、若者の票がどこに流れるかも大きな関心事となっている。若者雇用対策の積極化は票獲得の大きな力であり、重要政策に位置付けられている所以であろう。
同プランの主な数値目標をみると、全体の不本意非正規労働者の割合を10%に減少させるほか、ハローワークによる正社員就職・正社員転換数450万人、新規大卒の正社員就職割合95%、短時間労働者の正社員転換数500万人などとなっている。たとえば、不本意非正規労働者の割合をみると、現時点で18%を占めており、これをほぼ半減させる目標を設定したということになる。決して生易しい数値目標ではない。
可能な限りの予算投入と考え得る対策を形にした同プランであるが、7月の選挙を強く意識したものならその後の推進力は衰えてしまう可能性がある。決して全国民共通の思いを裏切らないでほしい。