普通解雇か自主退職かが争われたあっせん事例
あっせんの内容
紛争当事者の双方を対面させた上で、あっせん委員が双方の主張の調整を行うことによりあっせんを実施したが、退職に係る事実関係についての当事者の認識に大きな隔たりが認められ感情的な言い争いとなった。
あっせん委員が、申請人Xをいったん退席させた上で、被申請人Yに和解金支払いによる紛争解決について打診したところ「和解金の支払いは悪い前例となる。他の社員にも示しがつかない。支払いについて妥協できない」旨を主張した。
あっせん委員が重ねて説得したところ「解雇予告手当相当額であれば和解金として支払いに応じてもよい」と譲歩した。
次に、Xのみに対して、あっせん委員が紛争解決方法について打診したところ「これまで事業主に面談する機会がなかったが、今回あっせんにおいて自分の主張ができたことで満足している。解決方法についてはあっせん委員に一任したい」とのことであった。
そこで、あっせん委員が和解金支払いについて説明したところ、同意を得た。
結 果
和解金の金額について双方の主張の調整を行った結果、被申請人Yが申請人Xに対して和解金として解雇予告手当相当額の金銭を支払うことで、紛争当事者間の合意が成立した。
また、その旨を記載した合意文書の作成が行われた。
申請人Xの退職に係る経緯について紛争当事者間の主張に大きな隔たりが認められる中、解雇なのか自主退職なのか事実関係の特定が困難であることを前提とした上での、和解金の支払いが争点となり、当初、あっせんの場においても双方とも感情的であったが、個別の場でのあっせん委員の説得により双方とも冷静になり、お互いに和解に向けて譲歩を示し、和解金の支払いでの解決に至った。
※この記事は弊社刊「都道府県労働局による 助言・指導 あっせん好事例集―職場のトラブルはどう解決されたのか」(平成24年3月30日発行)から一部抜粋したものです。