昔も今も変わらぬもの/社会保険労務士法人 中部労基会 小嶌事務所 代表 小嶌 美教
わが事務所は今年で創業63年を迎える。昭和28年、私の祖父が中小零細企業の労働・社会保険関係書類を役所へ提出する代行業務として創業し、叔母から父へと受け継がれ、現在は私が代表を務めている。
創業当時は社会保険制度を普及させるべく、飛び込み営業で1件1件企業を訪問し、制度の説明に明け暮れたと聞く。そして、社会保険料を直接事業主から徴収し、その現金を社会保険事務所へ納めるという業務を通じ、顧客を開拓していったようだ。
また、時代は高度成長期の真っただ中であり、中小企業の経営者は事務処理作業に費やす時間などなく、社会保険関係諸手続き、給料計算、就業規則作成などの依頼が増えていった。
今なお当事務所に残る鉄筆版画による就業規則は、単なる記録を超え、顧客の歴史であり、当時の事務作業のあり方や社労士業務の歩みを垣間見ることができる。
さて、当然のごとく時代は変化し、コンピューターやインターネットなどの普及により徹底的に効率が求められる世の中となった。また、人の働き方に対する意識も変化し、労働法は絶えず改正され、その都度企業も対応を迫られ、人事労務管理制度の見直しも重要な課題となっている。
このような変化の中で、社労士が企業にとって必要不可欠な存在となるにはどうあるべきか考えを巡らせたとき、必ず立ち返る当事務所の行動指針がある。
「相手の立場で話を聞き、理解する」、「相手の歩みに歩調を合わせ、寄り添う」、「相手が最も苦しいと感じていることに手を差し伸べる」の3つである。
これは祖父の当時からの基本姿勢であり、長きにわたる顧客とのお付き合いを通じ、より一層育まれ、培われたものである。
昔も今も変わることなく、対面して顧客の要望や悩みにじっくりと耳を傾ける時間を削ってはいけないと思っている。誠心誠意、顧客の話を「聞く」からこそ、時には顧客にとって耳の痛い話も受け入れてもらえるのだ。
このような時間を作り出すための業務の効率化であれば、できる限り改善したいと考え、当事務所の職員とともに試行錯誤の日々を送っている。
古いだけが取柄の何の変哲もない社労士事務所である。今日も地味に地道に顧客の話に耳を傾け、一緒に考えている。
社会保険労務士法人 中部労基会 小嶌事務所 代表 小嶌 美教【愛知】
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