【ひのみやぐら】がん患者の抱えるストレス
医療の目覚ましい進歩により、病院に通いながら職場で働き続ける人が徐々にではあるものの増えてきた。時代の要請もあり、働き方改革で「治療と仕事の両立支援」が重要な柱として掲げられている。
日本人の死亡原因の第一位であり続けている「がん」は、早期発見や進行度によっては治療が有効で、就労することも可能となっている。ただ、職場に勤務し続けられるといっても、厳しい局面に立たされていることには違いない。患者は肉体的な痛みと「いつ死ぬかもしれない」という恐怖により、多くのストレスを抱えることになる。精神的な苦痛から救うには、メンタルのケアが重要になることを、知っておいていただきたい。
こうしたなか、今、精神腫瘍科の存在が注目されている。がん患者とその家族の心のケアを専門に行っているのが精神腫瘍科で、がん患者専門の精神科医・診療内科医のことを精神腫瘍医という。がんと分かった初期段階から、治療と同時にカウンセリングを行うことが推奨され、この考え方が急速に医療関係者に浸透しているそうだ。もともとは、1977年に米国、ニューヨークのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターに精神科部門が設立されたのが始まりといわれている。日本では1992年、国立がん研究センター中央病院に「精神科」が開設され、その後、名称を「精神腫瘍科」に変更した。今では、都道府県がん診療連携拠点病院や地域がん診療連携拠点でも精神腫瘍科が設置されたり、精神腫瘍医が在籍するケースが増えている。
がんにり患しても安心して働くことができるようにするため、医療の進歩は頼もしい限りだが、職場の人をはじめ社会の理解が進まないことには、十分とはいえない。このため現状を知っていただきたく、今号、特集2では精神腫瘍医の清水研医師にがんを体験した人の心理とメンタルヘルスケアに関する医療現場の最前線を紹介してもらった。
社内の産業保健スタッフや人事労務関係者が患者の置かれている現状を把握すれば、休暇制度や勤務制度などよりよい環境整備の構築につながるのでは。