労働問題に悩む中小企業経営者/弁護士 片野田志朗
では、実際に経営者が悩まれていた相談事例をいくつか見てみましょう。
(1)業績悪化を原因として、創業以来のA従業員に対し、割増退職金を用意して退職勧奨したところこれに応じなかったため、やむを得ず整理解雇した。すると、3か月後にAから解雇無効の労働審判を申し立てられた。
(2)飲食店の従業員Bの実力を買って、口頭で承諾を得た後、新店舗の店長に抜擢して配転を命じたところ、Bは出社しなくなり、程なく、労働局からあっせんの通知がきた。内容は配転命令撤回に関するものだった。
(3)従業員Cから一身上の都合を理由に退職願いが出された。慰留適わず受理したところ、数か月後に弁護士名で内容証明郵便が届いた。内容は、パワハラによる慰謝料請求であった。
(4)従業員Dの横領が発覚したが、Dはこれを認め全額弁償してきた。Dに対する懲戒処分の程度及び刑事告訴の要否について相談したい。
(5)あるSNSに会社の秘密情報の書き込みがなされていることが発覚した。記載内容から書込者のあたりはつくが、どのように対応すればよいか。
(6)先に退職してE社を起業した元従業員Fの元に、他の従業員が後を追うかのように退職し、E社に転職しているようである。F若しくはE社に損害賠償請求をしたい。
(7)従業員Gが業務とは関係のないところで傷害事件を起こした。普段から社内でも素行が悪く、懲戒解雇したい。
(8)従業員Hに対し、試用期間終了後に能力不足を理由として雇止めをしたところ、合同労組の書記長と名乗る者から、団体交渉の申し入れがあった。内容は解雇の撤回であった。