経歴詐称を理由とする懲戒解雇の是非をめぐる助言・指導事例
紛争当事者の主張
申出人X(労働者)
営業の仕事は、残業はあったが、移動は公共機関を利用することになっていたし、交渉は事務所で行うので、身体的に特にきついものではなく、体調を崩したこともなかった。
障害者の認定を受けていることは話したくなかった。履歴書に記載していない会社があったが、履歴書に多数の会社が記載されていると採用に不利であると思って記載しなかった。
この理由は、障害のことで会社があまりしつこく聞くので、会社には話していない。
障害者であることが会社に知られた後、仕事に支障がない旨の診断書を会社に提出したが、このことは懲罰委員会で考慮されなかった。
障害者であることを秘匿していたこと、履歴書に職歴のすべてを記載していないことは事実であるが、身体的に何も支障はなく、仕事でミスをしたこともなく、会社には何も迷惑はかけていないので、懲戒解雇を取り消して職場に戻してもらいたい。
被申出人Y(事業主)
Xは、障害者の認定を受けていること、手術を数度受けていることを面接時に言わず、また、このことが発覚した後で履歴書に職歴のすべてを記載していないことがわかった。
健康状態は採用の重要な要素であり、ましてや、健康でなければ勤まらない営業職である場合、採用決定において、さらに重要である。
職歴を記載していないことについてXが何も理由を話さないのは、何かこの期間に大きな問題をかかえている可能性があるからではないか。職歴を重視するのは、新卒で著名な会社に就職している場合、安心感があるからである。
営業は身体的にも大変だし、顧客からの信頼が何より大切なので、嘘をつくような性格の者は会社には残しておけない。就業規則の「重要な経歴を偽り、その他不正な手段によって入社した者は懲戒解雇に処す」という規定を適用して懲戒解雇にしたことは間違っていない。