【安全衛生・お薦めの一冊】『元労働基準監督官からみた安全配慮義務―実務解説とケース・スタディ―』
2015.11.01
【書評】
労働行政のプロが指摘
本書は、安全配慮義務の理論と実務を示し、重要判例をケース・スタディで解説したもの。元請事業者や業務請負で争われた例のほか、長時間労働やパワハラなどさまざまな事例を取り上げている。
ケース・スタディは、筆者の行政経験を踏まえた解説が特徴だ。例えば「ケース3」の電通事件は、長時間労働とうつ病発症後の自殺との因果関係を認めたものだが「使用者側は、最低限でも法令で定める基準(努力義務規定を含みます。)を遵守しなければ、安全配慮義務を尽くしたことにはなりません」「悪化の兆候がみられた場合には適切に配慮する必要があります」と元労働基準監督官の視点で指摘している。
近年、労働関係法令を守ろうとしないブラック企業や過労死、過労自殺が増えている。安全配慮義務を問われる事案が数多く発生しており、正しい理解をするためにも、読んでおきたい一冊だ。
(栩木敬著、新日本法規出版刊、TEL:052-211-1525、A5判、384ページ、4200円+税)
平成27年11月1日第2245号 掲載