【主張】雇止め紛争が多発の恐れ

2018.03.12 【主張】
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 本紙報道によると、埼玉県内の私立学校で無期転換ルールの適用に関した労使紛争が埼玉県労働委員会に持ち込まれ、決定が下されたという(2月12日号5面既報)。同紛争事例に限らず、あからさまに無期転換ルールの適用回避を狙った労働条件変更が広まっているのが実態といえるが、労働契約法が民事法規である以上如何ともし難い。

 しかし、民事裁判に発展した場合、雇止めの多くが容認されず、企業は何らかの代償を支払わされる可能性が高い。長期化する裁判コストや労使の安定、人材の育成など総合的に考えれば、無期転換ルール回避を狙った安易な雇止めは、企業経営にとってマイナス要素でしかないことを自覚すべきである。

 最も話題となったのが、大手自動車メーカーによる雇止めである。厚生労働省の調べでは、無期転換ルールのクーリング期間が6カ月となっていることに対応して、同期間の無契約期間を設定した企業が5社あった。ただし、無契約期間終了後に再雇用を約束しているメーカーはないという。

 労働契約法に規定された無期転換ルールの回避を狙った雇止めが無効かどうかは、個々のケースによって条件が異なるため、早計に判断はできない。そもそもクーリング期間が設けられた以上、これに適合した制度が作られることは予見できたはずだ。回避策が労働契約法違法かについては判決を待つほかはない。

 埼玉県内の私立高校の場合は、事情が大きく異なる。5年を超えて契約更新して無期転換するには、対象者が優秀で有益と理事長が認めた場合などに限ると一方的に通告したもので、雇止め法理に反する可能性の高い条件変更といわざるを得ない。裁判では、勝ち目がないのは明白であろう。

 多くの中堅・中小企業では今後、水面下で同校のような無謀で違法な雇止めに着手するケースが増える可能性がある。非正規労働者の処遇や地位向上のために作った無期転換ルールが、逆に雇止めの契機になっているという現実は、ブラックジョークとしかいいようがない。

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平成30年3月12日第3152号2面 掲載
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