AI進化で業務拡大も/山内労務コンサルタント事務所 副所長 中島 和香
2017年版中小企業白書によれば、日本の企業のうち中小企業は99.7%を占めており、そのうち小規模企業は85.1%であるという。小規模企業とは、製造業その他で従業員数20人以下、商業・サービス業で5人以下の企業のことである。
少子高齢化に伴う従業員の高齢化、引退、採用難により、中小企業が人事労務関係の専門知識や経験を持った事務担当者を確保し続けるのは、ますます難しくなるであろう。
少人数で経営の効率化を図るためには、人事労務のような専門的あるいは定型的業務は外部に委託し、自社の貴重な人材は利益を生み出すコア業務に集中させるべきである。従来の管理体制では対処しきれない労働問題も多発する今、その受け皿は私たち社労士である。
一方、人工知能(AI)技術の普及により、定型業務は取って代わられ、社労士の仕事の大半がなくなるともいわれる。
しかし、作業は自動化・簡素化されても、AIの操作を行う主体は人、チェックを行うのも人であり、その業務自体がなくなるわけではない。むしろ、社労士も事務作業が軽減され、企業・経営者・労働者と向き合う時間が増え、委託を受けた企業に対して、提案・相談、トラブルの防止や解決など、専門知識を活かす業務に専念できるのではないか。
さらにAIが進化すれば、勤務管理、給与、人事評価、健康管理など人事労務管理関連のデータの一元管理のほか、その分析、結果を基にした人財の育成・活用の提案など業務の幅も広がるかもしれない。
「社労士は事務屋であってはならない」と私が勤務する事務所の所長はよくいう。法令を遵守した適切な事務手続きを行えるのは当然のこと。定型的業務を希望するお客様に対しても、コンサルティングという付加価値を付けてお返ししなければならない。そして、そのコンサルティングも「木(人事労務)を見て森(企業経営)を見ず」であってはいけない。そのためには、労働・社会保険全般にとどまらず、経営や社会情勢まで、豊富な知識が必要となるのである。
時代によって、企業が求めるものも、社労士を取り巻く環境も目まぐるしく変わっていく。私たち社労士は常にアンテナを張り巡らせ、「知識や情報の仕入れ」に投資し、それを還元することで、企業を支えていきたいものである。
山内労務コンサルタント事務所 副所長 中島 和香【山形】
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