採用選考の方法をめぐる助言・指導事例
募集・採用
申出の概要
申出人X(労働者)は、清掃業を営む被申出人Yの募集広告を見て応募したが、Yが職業安定所の紹介を受けてから来てほしいというので、職業安定所で紹介状を持って再び面接に行ったところ、すでに別の人に採用を決定したことを理由に面接を断られた。
選考の方法に納得がいかないため労働局長の助言・指導を求めた。
紛争の背景
1.被申出人Yは清掃業務従事者○人の定員で求人広告を出していた。
2.Yは別に職業安定所にも求人登録をしていた。
3.申出人Xの応募の際にはYは誰の採用も決定していなかった。
4.Xが再度面接に来たときには求人広告に記載していた○人の定員の採用が決定されていた。
紛争当事者の主張
申出人X(労働者)
Yの募集広告を見てすぐに面接に行ったところ、Yは採用面接をせずに、職業安定所の紹介状を持って来るように言われた。
なぜ、いちいち職業安定所の紹介状がいるのか不思議に思ったが、こんなことで抗議して面接が受けられなくなるのもつまらないと思い、職業安定所の紹介状を持って再び面接に行った
ところ、今度は採用を締め切ったと言われた。
こんな募集の仕方は間違っているので、今後このようなことのないようYを指導してほしい。
被申出人Y(事業主)
Xに職業安定所の紹介状を持って来てくれと言ったのは、職業安定所にも求人登録をしているし、職業安定所が紹介してくれれば、安心だと思ったからである。
他の面接者にもそのように言っていたが、採用した者全員が紹介状を持って来た者ではない。
Xが再度面接に来たときは、募集人員に達していた。
助言・指導の内容
職業安定所の紹介状は求人者の身元、職務遂行能力を保証するものではなく、単に紹介者が求人に応募する意思があることを書面にしたにすぎず、また、紹介状を持って来ていない者も採用していることから、わざわざ紹介状をとりに行かせる必要は認められず、指示どおり紹介状を持って来た申出人Xに対し不利益を生じさせたので、今後、採用基準を明確にし、公正な選考を行うこと。
結 果
指導の結果、被申出人Yは紹介状にかかわらず、公正な選考を行うことを約した。
判断のポイント
1.採用面接を受けるに際し職業安定所の紹介状を条件とする理由はあるのか。
・職業安定所の紹介状は事業主がいう身元を保証する性格のものではない。
・実際、事業主は、申出人と前後して面接した者で紹介状を持っていなかった者を採用している。
2.事業主の採用基準は公正な選考の面から明確であったか。
・職業安定所の紹介状の扱いを含め、明確でなかった。
※この記事は弊社刊「都道府県労働局による 助言・指導 あっせん好事例集―職場のトラブルはどう解決されたのか」(平成24年3月30日発行)から一部抜粋したものです。