企業研修で介護離職防止/Beeパートナーズ社労士事務所 吉岡 規子
2012年2月から介護離職防止、仕事と介護の両立の企業支援を行っている。きっかけは2009年、私自身が突然介護をする事態となったからだ。
最初の1年は先がみえない不安と、介護に対する知識や意識も足りず、気持ちに余裕がないためか家族間で心を通わせることに苦労した。また、仕事のパフォーマンスも落ちて思いどおりに仕事が進まず、仕事を辞めた方が良いのではないかと感じたときもあった。
名古屋と実家の往復も慣れてくると、近しい人が介護をしていたり、すでに介護両立支援研修を行っている企業があることを知った。超高齢社会の日本で家族が介護と向き合うことは特別ではないと私に気付かせてくれることが身近に増え、社労士として、「介護に向き合っても仕事を辞めずに働き続ける」をテーマに行動しようと決意した。
高齢化率30%と予測されている2025年、家庭も職場も介護と向き合う可能性が高く、「家庭のことは家庭のこと」と切り離せない時代である。「介護はある日突然に!」と表現されるが、知識と意識の学びで突然と感じさせないことができる。職場も社員個人も、1日も早い備えの強化が必要だ。
備えとして、介護経験の有無や介護に対する不安等について社員にアンケートを実施し、現状を把握するよう薦めている。
経営者や人事担当者は、介護が必要な社員は社内にはほとんどいないと勘違いしているため、結果が予測する人数を上回ることに驚くケースが多い。
もう1つ薦めたいのは企業研修だ。この6年間、約2000人以上の社員に介護保険や社内制度を始め、今から採るべき行動を伝えてきた。
カミングアウトしにくい介護だが、研修では親の年齢や現在の状況を話す人が多く、とくに介護経験者は心構えや手続きについて貴重なアドバイスをくれる。職場の上長や同僚の理解があったから両立して乗り越えたと話す社員もいる。研修は知識を得るだけでなく、社員同士の情報交換の場となり、1人で介護を抱え込まないよう促す良い機会である。
社会的背景も変わっていく中、今までと同じやり方やあり方では社員の介護離職は防げない。社労士としてみえぬ未来を不安にさせるのではなく、企業や働く人達に多様な社会資源(家族・地域、企業、医療・介護事業者、行政)の存在を知ってもらい、今から行動できることがあることを伝えていきたい。
Beeパートナーズ社労士事務所 吉岡 規子【愛知】
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