【主張】大手で未だに事前面接…
神奈川県労働委員会の救済命令に関する本紙報道によると、日本を代表する大手自動車メーカーが、派遣労働者の受入れにおいて、「面談」を実施していたという(3月19日号5面既報)。
「派遣先が講ずべき措置に関する指針」によると、派遣先が派遣の受入れに先立って面接したり、履歴書送付を条件とする行為を禁止している。同社は、この行為などによって派遣労働者からの団体交渉に応じなければならない事態に陥った。大手企業においても未だ初歩的な派遣法違反がまかり通っている事態を憂慮せざるを得ない。
労働組合法上の「使用者」は、本来、雇用主である派遣元であるが、個別判断によっては派遣先も「使用者」とみなされ、責任を取らされるケースが少なくなく注意を要する。部分的であっても派遣労働者の労働条件を具体的に決定していると、その範囲において使用者性有りと認められてしまう。
今回の紛争事案では、派遣先である同社が、受け入れようとする派遣労働者を同社内に呼び寄せたうえ、「面談」を受けるよう求めた。さらに、過去の作品などの提出を要請している。派遣元は、同社の「面談」終了後に、派遣労働者に就労決定を通知し、雇用契約を結んでいた。
いわゆる「事前面接」と捉えることができ、派遣法施行当初から大きな問題となっていたもので、古くて新しい問題といえる。中小零細企業ならともかく、日本を代表する大手企業の行為とは到底思えない。相応のペナルティーを負わざるを得ないのは当然であろう。
ただし、不当労働行為制度は、使用者の契約上の責任を追及するものではなく、団結権侵害に当たる行為を是正して正常な労使関係を回復させるのが主目的である。ペナルティーといっても、派遣労働者と雇用契約を締結する義務まで判定したわけでない。労使間で誠実な話合い実施を命令したに留まる。
トラブルがこれ以上拡大する前に派遣労働者との団体交渉に応じ、労使双方が納得のいく結論を出す努力をしてもらいたい。