社労士制度創設50周年/上田社会保険労務士事務所 上田 和男
今年は、社会保険労務士制度創設50周年を迎える。
そこで私自身の社労士歴を振り返るとともに、これからの社労士について語りたい。
受験当時、試験は記述式と択一式で合格率も今ほど低くはなかった。業務を始めたのは、法人であれば役員1人であっても社会保険加入が義務付けられたころで、毎月、新規適用の対応に追われたものである。
昭和61年4月に基礎年金制度が導入され、専業主婦も強制加入となる。それにより年金に関心を持つ人が増え、社労士への相談件数も多くなるとともに知名度も上がってきた。
私は、今でも毎年、中学校の文化祭で年金の出前授業を行っている。
中学生に50年も先の話をしても仕方がないので「『金』の付くものに預金と税金と年金がある」と述べ、それぞれの違いを考えてもらう。
教えた生徒に街で会ったとき、年金保険料を払ってくれているのを耳にすると、教え甲斐を感じる。
労災に関しては、療養、休業請求はもとより、高速道路上で積荷の落下物に乗り上げたことによる死亡事故や、建設現場での足場からの転落死亡事故の請求が今も心に残っている。
団体交渉も弁護士とともに会社側として出たことがある。
以前、勤務していた会社が倒産に向かっていたとき、最後の組合の委員長を仰せつかったが、このときに労働基準法はもとより、いわゆる労働三法と呼ばれる労働組合法、労働関係調整法なども学んだ。これが私の社労士への道にもつながった。それと同時に今、立場こそ逆転したものの、そのときの体験が役立ったのである。
今日、雇用形態の多様化とともに、集団的労使関係から個別的労働関係が主体となってきている。各士業においても裁判外紛争解決手続き(ADR)が活用されるようになり、特定社労士が誕生した。
電子申請も行っているが書類の内容によっては、窓口対応もまだ残っている。完全な電子化はまだまだ先である。
社労士業務も、相談型から助成金申請などの提案型へと変わりつつある。最近、中小企業において事業承継者問題が取りざたされているが、社労士界も後継者育成に悩んでいる。
また、AI化が進み社労士業務が減少するのではといわれているが、企業における仕入れに当たる知識の習得、コミュニケーション能力、発信力、聴く力があればまだまだ捨てたものではない。
上田社会保険労務士事務所 上田 和男【大阪】
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