【ひのみやぐら】産廃処理業の安全衛生
送検事例を担当していて近年、産業廃棄物処理業者(リサイクル業者)が書類送検されるケースが少なくないように感じる。コンベヤーへの危険防止措置違反、クレーン操作での安全衛生教育の未実施など違反内容はさまざまだが、労働行政が目を光らせている証拠だろう。
厚生労働省の統計を見ても平成26年以降の産業廃棄物処理業の労働災害発生件数は、1244人、1280人、1320人と推移しており、全産業が減少傾向にあるなかで、同業界は増加の一途をたどっている。度数率に至っては8.00(平成28年)で、全産業平均の1.63を大幅に上回る。建設業の0.75や道路貨物運送業の2.62に比べ、随分と高い。建設業と比較すれば、なんと8倍以上ということになる。
(公社)神奈川県産業資源循環協会が平成28年に作成した「初歩の労災防止マニュアル」(当時の名称は神奈川県産業廃棄物協会)によると、もっとも多い労働災害はコンベヤーや機械のはさまれ・巻き込まれ災害。機械が作動中にもかかわらず、点検や修理を行ってしまったことで、手や腕などが巻き込まれる災害が起きている。次いで多いのは、墜落・転落だ。仕事の性質上、トラックの荷台に上ることが少なくない。作業中や昇降中に滑って被災することが後を絶たない。中間処理業務での「はさまれ・巻き込まれ」、収集・運搬業務の「墜落・転落」の2つの事故の型が全体の約4割を占めているという。
こうした状況に業界団体も手をこまねいているわけではない。(公社)全国産業資源循環連合会では、平成29年度から始まる「労働災害防止(3カ年)計画」を実施しているところで、死傷者数を「平成24~26年度の平均より少ない996人以下」とすることを目標に掲げている。研修会や安全パトロールなどを積極的に取り組むことで、事業主の意識改革を図るのが最重要課題という。労災に対する問題意識、安全に関する認識をまずは事業主から改め、従業員の意識高揚につなげていく狙いだ。
悲惨な労働災害を繰り返すまいと業界団体、傘下企業が本腰を入れている。弊誌では、今後も同業界を追っていきたい。