【今週の労務書】『働き方と年収の壁の経済学』
2018.05.19
【書評】
就業形態への影響解明
所得税の「103万円の壁」などが、配偶者のいる女性の就業形態選択に影響を与えていることを、様ざまなデータを用いて明らかにしたのが本書。経済学の視点から解説した。
日本の労働市場では、①配偶者控除制度、②公的年金制度、③それらと連動するように年収などの支給要件を設定している企業の家族手当――の「年収の壁」が、女性の就業形態選択において、パート化を促していると指摘。女性の家事労働の長時間化、若年の非正規労働者の低劣な就労条件にも影響している。
分析結果から、制度を変更した際の効果の推計も試みた。配偶者控除などをなくしても正社員は増加しない。一方、年収の壁を撤廃し全ての人に適用すれば、正社員化を大幅に促進できるとした。
(石塚浩美著、日本評論社刊、TEL:03-3987-8621、2000円+税)
平成30年5月21日第3161号16面 掲載