【主張】パート厚年適用へ準備を
厚生労働省は、パートタイム労働者の厚生年金および健康保険の適用拡大に向けた検討を加速しつつある。日本は公的年金の持続可能性の確保という極めて深刻な課題に直面しており、企業としても大局的な見地から適用拡大に前向きに取り組むべきだろう。
今年10月からいよいよパート労働者の厚生年金等の適用拡大がスタートする。平成24年8月に成立した公的年金機能強化法によると、規模501人以上企業に在籍し、週所定労働時間が20時間以上で、しかも月額賃金が8万8000円以上などとする一定範囲のパート労働者が「強制適用」となる。
厚労省では、機能強化法の施行と同時にさらなる適用拡大を図るため、今国会に新たに公的年金持続可能性向上法案を提出した(本紙4月11日号1面参照)。規模500人以下企業に対する「任意適用」の仕組みの導入を試みるもので、適用には労働者の同意が必要とされている。
つまり、24年の機能強化法で「空白領域」だった規模500人以下企業への適用拡大を促進する狙いであり、政府・厚労省の適用拡大への意気込みが強く感じられる法案提出と考えられよう。加えて1企業当たり最大600万円の助成金も準備している。
2つの法律によって、週労働時間が20〜30時間のパート労働者約400万人のうち、最大75万人程度が適用対象に加わる見込みである。
しかし、パート労働者への厚生年金等の適用拡大は、これで終わるわけではない。機能強化法附則では、31年9月30日までにさらなる適用拡大について検討し、その結果に基づき必要な対策を実施すると明記している。
具体的には、適用要件の見直し・緩和が有力だろう。すでに現在、月額賃金8万8000円以上では、「高過ぎる」という声が挙がっている。最低賃金で週20時間働いてこの賃金水準をクリアできる地域は見当たらない。
非正規労働者が約4割となった現在、高齢期における所得、年金を維持し社会保障を健全に運営していくため、適用拡大は極めて重要な意味を持つと考えるべきである。