【ひのみやぐら】協力会社に伝わる指導を
労働安全衛生法第29条では「元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない」と定めている。労働災害の発生率は一般的に元方事業者よりも、関係請負人のほうが高く、こうした実態から見ても協力会社の災害防止が重要になるのはいうまでもない。なお、建設業では安衛法第30条で特定元方事業者の講ずべき措置が明示され、違反して書類送検となるケースもある。
とはいえ、協力会社の安全衛生対策について頭を痛めている担当者は少なくないだろう。ある程度、メンバーが固定している事業場ならまだしも、多くの建設現場では、多数の協力会社が出たり入ったりする。スポットとして一時的に工事を請け負う業者や二次、三次となると担当者の顔を覚えるのも一苦労といったところだろう。現場にいる時間が短いということもあり、教育しても効果が薄いのも悩みのタネだ。
今号、特集Ⅰで紹介する富士石油袖ケ浦製油所は、協力会社への安全確保に強力に力を入れている。製油所内という特別な現場は、高圧ガスなど大量の危険物が存在する。取り扱いを間違えると、爆発火災などの重大災害になりかねず、作業所内のルールを全員がしっかりと理解することが求められる。そこで、同社は「安全作業心得」と題する小冊子を作成した。最低限の決まり事を分かりやすく16ページにまとめたものだ。事業場内での禁止事項、工事着工時の決め事、災害防止のための安全ルールなどいつでも確認できるように、ポケットサイズとした。
さらに、協力会社の労働者が不安全行動をしていないか確認する「安全作業指導員」を配置。製油所内をよく知るベテランで、危険箇所がないかくまなくチェックする。注意するだけではなく、ねぎらいや思いやりの言葉での声かけに配慮し、日常からのコミュニケーションを重視している。
重層構造の現場は、人が激しく出入りするので、どうしても管理に困難さがつきまとう。同社の安全衛生活動は、大きなヒントになるのでは。