【主張】合同労組が”戦術転換”へ
東京都労働委員会の平成29年不当労働行為審査取扱い状況によると、合同労組関連事件の増加に伴って、「支配介入」救済申立てが大きく拡大しているという(本紙5月21日付2面既報)。
紛争内容は、会社側からの反組合的言動、人事権の不当行使、団体交渉への不当な対応の仕方、不利益扱いによる組合弱体化政策などが主なところである。救済申立ての主役が企業内組合から合同労組に移行した中で、企業側の不用意な言動、行動が標的になっている。経営者としては、企業内組合も合同労組も同列に扱わないと、思いがけない紛争に発展しコストアップ要因となりかねない。
新規の不当労働行為救済申立て件数は、依然として「団体交渉拒否」が最多だが、「支配介入」が大幅に増加し、年間64件(前年41件)となった。つまり、組合員への脱退勧奨や組合運営に干渉し、最終的に組合弱体化を狙う形の不当労働行為がめだち始めた。
合同労組関連に限った救済申立て状況をみると、「支配介入」事件が7割を占めているのが実態。会社による人事権行使関連が前年ゼロから12件、団体交渉時の会社の対応関連が同1件から11件、不利益扱いによる組合弱体化政策が同ゼロから7件へ、ともに急増した。
合同労組からの救済申立て自体は、これまでも多数を占めてきたことを考えると、「団体交渉拒否」として攻めるより、「支配介入」を問題視した方が会社へのダメージが大きく有効的とみて、戦術転換を図ってきたと推測できる。
支配介入が争点になると、個別の経営者や人事担当者の言動・行為が俎上に上り、より厳しい審査とならざるを得ない。「不利益取扱い」の救済申立ては、組合員差別の疎明に長期間を要するなど、比較的多くの困難が伴う。
都労委も「それまで労使関係のない社外の労組(合同労組)への企業の対応が問題となることが多い」とみている。労働組合法上、企業内組合と合同労組は同様の位置付けにある。企業は、突然外部から現れた合同労組役員に対しても自らの言動・行為に責任を持たなければならない。