【主張】重み増してきた説明責任
雇用契約期間があることによる不合理な賃金格差を禁止した労働契約法第20条の運用に関し、最高裁が判断の枠組みを明確にした。
長澤運輸事件とハマキョウレックス事件の2つの判例(本紙6月11日号1面既報)によると、有期契約労働者と無期契約労働者との間の賃金格差が不合理か否かを判断するに当たっては、賃金総額を比較するのみならず、賃金項目や各種手当の趣旨を個別に考慮すべきものとした。
経営者、人事担当者にとっては、賃金格差に対する説明責任が重くのしかかってくる判例といえる。日ごろから幅広く人事労務関連情報を収集して、“理論武装”を怠らないようにして欲しい。
両判決によると、労契法第20条は、有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることを理由として無期契約労働者の労働条件と相違する場合には、業務の内容、責任の程度、配置の変更範囲、その他の事情を考慮して不合理であってはならないというのがその趣旨と指摘した。
両者間で労働条件に相違があり得ることを前提としているが、均衡のとれたものとするよう求めている。
具体的判断に当たっては、賃金総額を比較するのみならず、賃金項目や各種手当の趣旨を個別に考慮すべきとした点が注目される。
長澤運輸事件を例にとると、正社員の基本給が「在籍給」「年齢給」「職務給」などで構成しているのに対して、嘱託社員は「基本賃金」「歩合給」「調整給」などで構成していた。それぞれについて支給の趣旨と金額を検討したうえで、結果的に不合理ではないとして高裁判決をほぼ容認している。
定年後の賃金水準調整に関して労契法第20条の「その他の事情」に該当すると認定したこと、全体の年収水準が定年前の79%程度となるよう設定していたことも決め手となっている。
各種手当に関してはそれぞれの趣旨を考慮し、精勤手当や無事故手当などの支給格差を不合理と判断した。経営判断により生じた格差の合理性をどこまでうまく説明できるかが結論を左右する。