【ひのみやぐら】進む建設業の心の対策
建設現場のストレス状況を把握しようと「建設業におけるメンタルヘルス対策のあり方に関する検討会」が平成27年に立ち上がった。委員会の成果として「建災防方式健康KY」「無記名ストレスチェック」を開発し、28年度は集団分析結果を出力するプログラムを作成している。さらに翌年度には、集団分析を行いメンタルヘルス対策アドバイザーが現場指導する際の職場環境改善手法、指導方法の検討を行い、結果を報告書にまとめた。建設業でのメンタルヘルス対策は、確実に軌道に乗ってきたといえる。背景には、長時間労働の是正や週休二日制を目的とした「働き方改革」が追い風になっているのはいうまでもない。
メンタルヘルス対策の関心が高まったのは社会的話題となった五輪工事での過労自殺問題もあるが、メンタル不調が不安全行動の要因となっており、ひいては労働災害の原因であることが広く認識されるようになったからともいえる。前号「産業カウンセリングの現場から」では、委員である東邦大学の小山文彦教授に寄稿していただいているが「『過重労働・不眠』→『睡眠不足・脳作業疲労の蓄積』→『注意・集中力の減退』→『不安全行動・危険・労災事故』となることが少なくありません」とメンタル不調から労働災害に至る経緯を分かりやすく解説し、脳(精神)の疲労、睡眠不足を長引かせないようにすることが過労死予防と労働災害未然防止の起点であると指摘している。
行政や災害防止団体の動きが活発化するなか、現場ではどのような対策が進められているか――今号特集Ⅰでは、建設現場のメンタルヘルス対策最前線を紹介する。建災防の介入調査に協力した現場から職場環境改善の取組みを取材。どの事例にも共通するのは、コミュニケーションを重視している点だ。
具体的な手法は記事に預けるとして、日々、コミュニケーションをよくし問題があっても話し合って解決することで、ストレス軽減につながったり、互いに意見を出し合える関係性が職場改善につながっているという。こうした現場からの声は、着実に効果が現れてきている何よりの証だろう。