【ひのみやぐら】熱中症対策怠り書類送検も
今年も夏がやってきた。気象庁の予報を聞くまでもなく、猛烈な暑さが日本列島を覆うだろう。熱中症予防には、万全の対策が求められる。
熱中症の月別発生状況をみると7、8月がピークだが、5月以前にも発生しているケースがあり、現時点でも油断はできない。また、梅雨明けは要注意で、体が暑さに慣れていないところで、気温が上がると熱中症となる危険が増す。
前号の「送検事例」では、福島・いわき労働基準監督署が発汗作業に関する措置義務違反で、建設業者を福島地検いわき支部に送致した事案を紹介した。道路の除草作業を行っていた労働者が体調不良を訴えたので、休憩をしていたものの、嘔吐や痙攣、身体硬直などの症状が現れ、心肺停止の状態に陥った。労働者は病院に搬送されたが、到着後に死亡したという。事件が起きたのは昨年8月4日午後2時ごろで、気温は28.8%、湿度は77%だった。
いわき労基署によると、労働者はアルバイトで屋外での作業に不慣れだった。被疑者は熱への順化期間の認識が足りなかったとしている。
過去を遡ってみると、平成25年10月1日に兵庫・尼崎労基署で熱中症対策を怠った警備会社と同社会長を書類送検した事案がある(読者専用サイトで閲覧可能)。平成25年6月13日、ガス工事現場の交通誘導を行っていた60歳の労働者が倒れていたためクーラーの効いた車内で休ませていたが、容体が悪化したため、救急車を呼んだものの搬送先の病院で死亡した。当日の最高気温は34.4℃。多量の発汗を伴う状況であったのに塩や飲料水を与えておらず、休んでいる間にも摂取させていなかった。被疑者は「7月から備える予定だった」という。2つの事件に共通するのは油断、認識不足といえる。「このくらいの暑さは大丈夫だろう」「まだ6月だから」といった甘い考えが、災害を引き起こす原因となった。安衛則第617条では「事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない」と定めている。
法令を順守していなければ、書類送検もありうることを肝に銘じて。