いま、過渡期の中にある労働法~眼前の諸問題を俯瞰的に理解するために~/弁護士 倉重 公太朗
2016.05.21
【弁護士による労務エッセー】
直近の労働法まわりの議論が意味するもの
いま、労働法(※労働基準法をはじめとして、労働契約法その他労働問題に関連する法律一切の総称の意)は過渡期の中にある。
このことは、直近の労働関連法のトピックに関する議論を見ても読み取ることが可能である。一例を挙げれば、
・平成27年の派遣法改正(平成27年9月30日施行)
・民主党政権時代の派遣法改正である偽装請負等派遣法違反事例に対する救済としての直接雇用申込みなし制度(同年10月1日施行)
・平成28年秋以降に審議予定の労基法改正による高度プロフェッショナル制度(旧称ホワイトカラーエグゼンプション制度)
・安倍政権が進める同一労働同一賃金政策
・女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・公表(実務的な動向)
・限定正社員を巡る議論
・マタハラ判決(最一小判平成26年10月23日)及びマタハラ防止義務の新設(均等法・育介法改正)
・労働契約法18条に基づく無期転換権(平成25年4月から施行済みであるが、行使は平成30年4月から)
これらは全てに共通する背景事情がある。それは、高度経済成長期のいわゆる「日本型雇用」が限界を迎え、今後の雇用社会はどうあるべきかという視点から「変わらなければ」いけないという思いと「変わりたくない」という勢力のせめぎ合いから生まれた過渡期における妥協の産物であるということである。