【主張】厚労省は早急に分割必要
中央官庁の再々編で、厚生労働省の分割案が浮上している。年金、医療など厚生分野と労働分野を再び分割する方向という。近年、雇用・労働に対する社会的な関心が高まり、国政として重要性が高まってきた。現状の態勢では、同省内はもとより国会での審議が深まらない弊害が生じているのは確かだ。
最も懸念されるのは、このままだと厚労省内で労働政策のエキスパートが縮小していく恐れがあることである。厚労省キャリアが一括採用となって、すでに約20年が経過している。現在、労働政策を主導する立場にある局長、審議官クラスはかろうじて旧労働省採用者で占められている。いわば、新卒時から専門的に労働政策を見つめてきたエキスパートたちだ。厚生・労働を早急に分割し、本当のエキスパートを絶やさないようにして欲しい。
自民党の行政改革推進本部では、近く国に対して中央官庁の再々編を提言する意向という。そのなかで、注目されているのが厚労省の分割案である。中央官庁の数を減らす合理化の結果として、1府12省庁態勢となったものの、当初から厚労省の業務量や予算規模の大きさが問題視されていた。
過労死や自殺事案の拡大、ブラック企業の出現などに伴って、雇用・労働に対する社会的関心が高まり、毎年のように大きな制度改正が実施されているが、十分な処理態勢がとれない状況にある。先の通常国会では、とうとう調査データのミスまで露呈してしまった。国会の衆・参厚生労働委員会では、厚生・労働分野双方の法案審議が行われるため常に渋滞状況にある。
それにも増して心配なのが労働政策のエキスパートが途絶えかねないことだ。労働政策の企画立案・実行には、やはりエキスパートが必要である。長年にわたって労働政策や労使の動向を見つめ、正しい方向性が打ち出せる経験と知識が不可欠である。
厚労省一括採用者がすでに幹部クラスに到達している。学識経験者や労使の主張にも正面から対抗できるキャリアのエキスパートを絶やしてはならない。