「労務倒産」回避の鍵/社会保険労務士法人 西山経営労務事務所 代表社員 西山 茂
今や業種を問わず、人手不足・採用困難に拍車がかかっている。当事務所のお客さまもご多分に漏れず、やれ「Indeed」だ、やれ「しゅふJOB」だとお金もかけつつ、採用媒体を次々と試している。そして、採用にこぎつけても、求めていた人材であるとは限らない。
「採用は博打みたいなものだ」と言っていた顧問先の社長が、ようやく採用できて、「こんなはずではなかった」と漏らすというのも「あるある」な話である。
目の前の人材不足の状況に際し、効果的な採用ツールや媒体に期待し、活用していくこと自体は、もちろん大切で必要なことだと思っている。
しかし、本当に良い社員に入ってもらおう、応募者から自社を選んでもらおうとするには、「会社自体が入社に値する魅力的なもの」になっていることの方が、より重要なことだと強く感じている。
そのために、会社が目先でなく中長期的な視点で留意しておくべきこととして、次の3点を挙げたい。お客さまにはその観点から、日頃のアドバイスを行っていることでもある。
1つ目に、自社のお客さまに「さん付け」あるいは「さま付け」にする習慣を付けることである。大事な利益の源泉である取引先のお客さまに対し、社内で呼び捨てにしていたり、「あの客が」などという言い方が習慣化されているようでは、この会社はお題目だけの「お客さま第一主義」、「お客さまを大切にしていない」と思われ、ひいては「当然社員のことも大切にはしてくれないのだろう」と推測され、「働きがいがない」と判断される。その結果、応募者の足は自然に遠のくことになってしまうであろう。
2つ目に、きちんとした経営理念・ミッション等を策定したのなら、社長を含め誰がいつその内容を尋ねられても、スラスラと言えるようになっているべきである。採用面接の場で応募者から経営理念を尋ねられた部長が「えーっと何だっけ」などと言うようでは、求人票にちりばめた立派な言葉も説得力に欠ける。最後に、社員が朝起きた時に気が重い・嫌だという気持ちが起きず、明るく自然に会社(=仕事)に足が向くということである。
「言うだけなら簡単だ」、またこれらを「理想論だ」などと笑っていてはいけない。本当にこのような風土にするという気概で会社を良くできなければ、今後の圧倒的な求人難の時代などとても乗り切れずに、「労務倒産」への道を歩むことになるであろう。
社会保険労務士法人 西山経営労務事務所 代表社員 西山 茂【新潟】
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