【主張】物足りなさ残る通常国会
第190回通常国会が閉幕した。労働6法案からなる雇用保険法等改正案がスムーズに成立したことは大きな成果といえるが、一方で昨年の通常国会から継続審議となっていた労働基準法改正案と技能実習適正化法案は再度見送りとなってしまった。両法案とも極めて重要な改正内容を含んでおり、秋以降、精力的な審議に取り掛かり、早期成立を図るべきである。
今年の通常国会は、7月に国政選挙を控えていたため、与野党が正面から対立するような法案審議は事実上回避された。このため「残業代ゼロ法案」などと揶揄された高度プロフェッショナル制度創設をめざす労基法改正案の実質審議は一切行われなかった。
労基法改正案には、月60時間超の残業に対する割増賃金50%以上の中小企業への適用拡大や一定日数の年次有給休暇の使用者による時季指定義務化など画期的な内容を含んでいる。労働改革が政府の重要課題というなら、これ以上先送りできない。
技能実習適正化法案は、4月上旬から衆議院法務委員会で実質審議がスタートし、当初は成立の可能性もあったが、結局、参議院への法案送付までに至らなかった。来年3月施行ならば秋以降の成立で間に合うものの、禁止規定や罰則新設などを含んでいることを考慮すれば、準備期間をできる限り長く採るのが常道であろう。
これに対し、労働6法案からなる雇用保険法等改正案が、一括審議によりスムーズに成立したことは高く評価できる。審議期間がほぼ2カ月と短期間だったものの、改正内容は決して軽微なものではなかった。
「介護離職ゼロ」政策の一環として、介護休職の柔軟な取得を可能としたほか、65歳以上の高年齢者への雇用保険制度の適用などを実現している。とくに、高年齢者の雇用保険適用問題は、長年にわたり課題とされてきたもので、高齢社会が進んだこのタイミングで成立したことに大きな意義がある。
会期延長不能という制約を受けた通常国会だったとはいえ、全体としては物足りなさが残った。