【主張】外国人受入れ拡大の前提
厚生労働省が平成27年3月の新規学卒就職者を対象に離職状況についてまとめたところ、高卒就職者の約4割、大卒就職者の約3割が、就職後3年以内に離職しているという。臨時国会で定住を含む外国人材の新規受入れを審議中だが、同時並行的に若者の離職を抑制する効果的対策を打ち出す必要がある。
近年の景気拡大と若者を中心とする労働力人口減少により、業種によっては厳しい労働力不足に見舞われていることは、厚労省の雇用統計で明らかである。たとえば、介護分野においては、29年の有効求人数258万人に対し、有効求職者数は72万人と少なく、有効求人倍率は3.57倍にも及んでいる。このため、外国人材の受入れ対象職種としては、建設、農業、宿泊、介護、造船など合計14職種程度となりそうだ。
将来の労働力人口減少を重く受け止めれば、切実な業種に絞って外国人材を受け入れる用意を長期的視野に立って進めていくのも一つの選択肢であろう。グローバル化の中にあって、「純血」を守り抜くことのみが正しいといえるかは疑問符が付く。
しかし、人手不足業種における若者の離職理由が労働条件の劣化にあるとすれば、もう一度考え直す必要があろう。若者を中心とする労働者が集まらない、または定着できない労働条件をそのままにして外国人材を雇用するのは筋違いである。
高校の新規学卒就職者の離職状況を業種別にみると、宿泊業・飲食サービス業の3年以内離職率は63%にも達している。次いで、生活関連サービス業・娯楽業は59%、小売業は48%、医療・福祉は47%といずれも高率だ。
初めて就職した会社を辞めた理由を3つまで選択させた結果、「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」や「賃金の条件が良くなかった」が上位を占めている。
将来を見据え外国人材の受入れを進めていくとともに、人手不足業種の各種労働条件を早急に改善する必要がある。まして、外国人材の受入れによって、さらに労働条件が悪化するようなことになれば支持は得られなくなる。