【主張】70歳まで雇用維持の時代
企業は、少なくとも70歳まで雇用を維持すべき時代が到来した。わが国の健康寿命は世界一であり、たとえば2007年に生まれた子供は107歳まで生きる確率が50%あるという。多くが100歳を超えると予想されるのであれば、健全な次世代社会を持続するために、今から準備を始めなければならない。厚生労働省も来年度に掛けて、企業に対する高齢者雇用支援をさらに強化している。官民ともに危機感を共有すべきだ。
現状をみると、希望者全員が66歳以上まで働ける継続雇用制度を導入している企業は6%程度、何らかの形で70歳以上まで働ける企業は26%程度となっている。健康寿命が大きく延伸する状況を踏まえれば、現行高年齢者雇用安定法で義務化している65歳までの継続雇用では到底対処不能である。企業は、できるだけ早い時期に希望者全員が70歳まで働ける制度を確立すべきだろう。
しかし、現時点での雇用義務化は困難とみられる。そうであれば、官民が一体となって、義務化が可能になる雇用環境に全体を引き上げる努力を始めたい。企業は、高齢者層のモチベーション向上を促す人事評価制度や個人差に配慮した雇用・賃金制度の整備など難しい課題を処理する必要がある。無理のない自社に合った制度を整えていってもらいたい。
厚労省による支援対策の利用も忘れてはならない。65歳以上への定年引上げなど高齢者の雇用環境整備を支援する「65歳超雇用推進助成金」の活用を始め、高齢・障害・求職者雇用支援機構に配置されている「高年齢者雇用アドバイザー」から助言サービスを受けるのも選択肢だ。
ハローワークにおいては、65歳以上の高齢者をターゲットとした「生涯現役支援窓口」の設置数を増強中である。来年度には、ハローワークの枠を越えて高齢者の働き出しを促進する「生涯現役支援プロジェクト」(仮称)も予定している。
超高齢社会になっても活力を保てるか否かが、将来のわが国の国力、存在感を左右することになる。正に「国家的課題」である。