【主張】不当労働行為に要注意を
中央労働委員会は、アイ介護サービス事件で、組合加入を問題視する発言をした社会保険労務士を不当労働行為と認定し、顧問契約を交わしていた会社に同種行為を繰り返さないことを誓約した陳謝文を掲示するポスト・ノーティス命令を下した(6月13日号2面既報)。
雇用労働問題の改革が、わが国の最重要課題となり、その分野の専門家である社労士の存在意義が急速に高まりつつある。改正社労士法によって、団体交渉に同席する機会が増え、労使紛争に関与する場面も拡大中といえよう。
活躍の機会が広がりつつあるからこそ、このような初歩的な不当労働行為事件にかかわってはいけない。社会問題になってしまえば、資格の信用問題にも発展しかねず、今回の中労委命令を戒めとしてもらいたい。
社労士が労使間を取り持つケースが増えている。平成18年の社労士法改正により、労働争議不介入規定が削除され、団体交渉の場に同席することが可能となったことが背景の一つといえよう。しかし、団体交渉での不当労働行為は専門家として決して許されないことを改めて確認したい。顧問会社の責任が問われるようなことになれば大問題に発展しかねない。
アイ介護サービス事件では、団体交渉以前の「面談」での発言が不当労働行為と認定されてしまった。就業時間中、会社の相談室において社労士と組合員の2人だけで約1時間にわたって「面談」し、その中で組合加入を問題視したり、転職を勧める発言をしたという。
中労委は、会社が労働問題の処理を依頼した顧問社労士による「面談」であり、「同社労士による行為は会社の行為というべき」と判断、組合活動を抑制し、弱体化させる不当な行為であり支配介入に当たるとした。
労使紛争に少しでもかかわる場合、団体交渉に限らずいかなる時も不当労働行為と認定されないよう細心の注意を払うべきことを示唆した事件だった。本来ならば、不当労働行為制度に不明な会社の行為、言動を戒める立場にあるはずだ。