契約更新時に労働条件の大幅な変更を求められたことをめぐるあっせん事例
労働条件引下げ(その他)
申請の概要
Yゴルフ場(被申請人)にパートとして勤務している申請人X(労働者)は、社長の交替時に一方的に賃金等の労働条件を引き下げられ、さらに2年後の契約更新時に労働条件の大幅な変更を求められ、元の労働条件を求めたところ拒否されたため、紛争となり、会社に対して賃金差額および慰謝料からなる損害賠償を求めて、あっせんを申請した。
紛争の背景
申請人X(労働者)は、平成○年4月から、Yゴルフ場(被申請人)でパート職員としてキャディー業務を行っていた。
2年後に社長が交替し、その際パート職員の賃金等の勤務条件が一方的に引き下げられた。
Xは、さらに2年後の4月の契約更新時に、さらに条件の低い施設清掃員としての契約を求められた。
XはYに対し、キャディーとしての職務と労働条件を求めたところ拒否された。その際、いろいろ社内で噂も立てられ、精神的にも苦痛を受け、当該事業所で働くことはできない状況に追い込まれ、Xは契約を更新することなく退職した。
紛争当事者の主張
申請人X(労働者)
労働条件が引き下げられたことによる減収分の損害賠償と精神的慰謝料として併せて100万円を要求する。
(内訳)
① 2年間の賃金の差額(2.5万円×12月×2年)……60万円
② 精神的慰謝料……40万円
被申請人Y(事業主)
Xに対する契約は、平成○年3月末で終了している。
復職を求めるなら、短期間のアルバイトキャディーか清掃員で雇う意思はあるが、Xの金銭的な要求に応じる考えはない。
あっせんの内容
あっせん委員が当事者双方に個別面談し意向を確認したところ、申請人Xは、損害賠償を要求し復職の意思はなく、被申請人Yは金銭的要求に応じる考えはないというように両者の歩み寄りがみられなかった。
あっせん委員は、再度、双方に紛争解決の意思があるかどうかの確認を行った上、Yに対し、社長が交替した2年前の契約更新の実態についてははっきりしないが、仮に労働者の合意なく賃金を引き下げたとなれば、法に抵触する可能性を否定できないことを指摘した上で損害賠償ではなく和解金として解決の意向を打診し、Yもあっせん案を示してほしいと要望した。
あっせん案
YからXに対して、和解金として金60万円を支払うこと。
結果
当事者双方とも、あっせん案を受諾した。
当事者双方の主張の隔たりが大きい事案であったが、あっせんの途中、被申請人Yは申請人Xに対し非を認めつつ、Xの要求する損害賠償ではなく、和解金としてであれば譲歩すると歩み寄りをみせ、さらに和解金について双方の譲歩により和解が成立した。
※この記事は弊社刊「都道府県労働局による 助言・指導 あっせん好事例集―職場のトラブルはどう解決されたのか」(平成24年3月30日発行)から一部抜粋したものです。