【ひのみやぐら】自社に合う教育が一番
災害の怖さを擬似的に再現し、目で見て肌で感じる安全体感教育。今まで、さまざまな安全体感施設を取材してきたが、「どれが一番」は答えられない。「どれも一番」だからである。
多くの事業場では、その作業内容に合った教材を自ら考案し、創意工夫にあふれた体感装置を作製している。廃材などを利用して器用に作り、しかもそれほどコストをかけていない。この辺に、ものづくり現場ゆえの強みが生かされている。作業内容や事業場の実情を把握する社内の安全スタッフが作るからこそ、職場にマッチした教育が可能というわけだ。
参加者も「災害の怖さが理解できた」「座学とは違い新鮮だった」と口を揃えたように有意義だったと感想を述べることがほとんど。自社で安全体感教育を行っている多くの事業場では、高い教育効果を得られているようだ。
今号特集Ⅰで紹介する日清紡ブレーキの「教育屋台」は、アイデアがたくさんつまった取組み。その特徴は、教材を折りたたみ式にしたり、キャスターを付けるなど移動しやすいようにして、ニーズのある職場に「出張」して教育を行う点。日常の作業の場で行うことで、より危険を実感することができる。
一例をあげると、巻き込まれ災害の体感では、チェーンベルト、ローラー、ボール盤の3種類がある。チェーンベルトで挟まれる災害の再現では、カバーに空けた穴に割り箸を挿入し、チェーンに巻き込まれる様子を観察する。
体感装置のほかにも、ビジュアルを重視した教育もユニークだ。扉を開けた状態の冷蔵庫のイラストには、アイスクリームやタッパー詰めの惣菜などのマグネットシートが貼り付けてある。食材が詰め込まれた冷蔵庫の整理・整頓は日ごろ行っていることだけに職場の5Sに例えやすい。
一方で、時間的、人材的になかなか自前で安全装置を用意することができないという事業場も少なくないだろう。このような場合は、外部利用者ができる施設を活用したい。施設によっては、教育をオーダーメードできるところもあるようだ。より多くの人が安全体感教育を受けられることを望む。