【主張】労政審は見直しの時期に
政府・与党から労働政策審議会の見直し論が再び提起された(本紙7月4日号1面既報)。労政審の役割を認めた上で、その構成メンバーのあり方を再検討すべきとする主張である。労働政策や労働法制を方向付けるに当たって、公労使の三者構成による労政審審議を経ることは、絶対的に必要な手続きといえる。しかし、長年にわたって大きな変動がないメンバー構成を改めるという視点は否定すべきではない。労使とも既得権を度外視して、時代に合った構成に改めるべきである。
いまや労組組織率の低迷は誰も否定できない。平成27年の組織率は17%強で、長期にわたる下落傾向に歯止めがかからない。最大のネックは、非正規労働者の増加である。近年では、非正規労働者の組織化に取り組む労組もみられるが、結果的には流れを変えるほどの成果は上がっていない。大きな労使紛争も減少し、労組に一時代前ほどの存在感はなくなっている。
政府・与党が最も問題視しているのはこの点だ。「最大のチャレンジ」と位置付けている働き方改革を強力に推進していく上で、非正規労働者の声を政策にフェアに反映していく必要があるにもかかわらず、現実には達成されていないと訴えた。非正規労働者の声を反映するには、大産別出身の労働者委員中心では不十分とする見方だ。
現在の労働者委員が非正規労働者を代弁していないという議論はいい過ぎかもしれないが、雇用・労働情勢の変遷に合わせて構成メンバーを変えていくという考え方は納得のいくものだ。時々の状況と検討課題によってその都度柔軟に委員を任命し、既得権をできるだけ排除する仕組みとすれば規制改革がもっと進むかもしれない。
労政審の見直し論は、これまでにも官邸周辺から度々噴出している。労働改革が遅々として進まない背景に、三者構成の労政審審議がはかどらないことが指摘されてきた。
労政審は労使の単なる利害調整の場でしかないと批判されたこともある。今回の見直し論は、労政審の存在を前提とするものであり、従来の論調とは異にしていよう。