AI時代に向けた選択/久井労務管理事務所 久井 貴弘
過日、ある経営者から誘われ、情報通信分野で著名な評論家のセミナーに参加することとなった。私はどちらかと言えばアナログ人間で、電子申請などIT化にもやっと乗っている程度で、積極的にセミナーに参加したわけではなかった。その中で今後の技術革新・社会革新の中心となるのは、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を用いてビッグデータの活用を図る第4次産業革命であると述べていた。
3年前になるが、野村総研が英オックスフォード大学との共同研究による「10~20年後に日本の労働力人口の49%が人工知能やロボットで代替が可能」との衝撃的な推計結果を発表している。少子化に伴う労働力の減少が顕著である日本において、AIやロボット等を活用した労働力の補完は必然といえるが、その数値の高さに驚かされた。
併せて人口知能やロボットによる代替可能性の高い100種の職業も公表された。その中に「経理事務員」や「人事系事務員」との表記があり、これを根拠としたサムライ業におけるAIによる代替可能性(自動化の可能性)が昨年日本経済新聞に掲載された。代替可能性が高い(自動化しやすい)順に行政書士が93.1%、税理士が92.5%、弁理士が92.1%となっている。
我われ社労士の代替可能性は79.7%であった。代替可能性が高い士業は定型業務が多いことが理由として指摘されている。一方、AIに代替されない士業として、中小企業診断士0.2%と弁護士1.4%が挙げられている。
診断士については経営者に改善策を提案する能力、弁護士については依頼者から話を引き出す対話力や紛争解決のための想像力がAIでは代替困難と理由付けされていた。
この推計結果はあくまで可能性であり、実際の代替が前述の数字のとおりになるかは不確定である。しかし、AIがこれまで以上のスピードで進化し、今以上に多くの業務をこなすことができるようになることは間違いない。
仮に推計結果のような状況になった時、我われ社労士はどうすべきであろうか? AIに取って変わられてしまうのか、自らもAIを活用して効率的に仕事をこなし共存の道を歩むのか、診断士や弁護士のように人間にしかできない能力を磨きAIと一線を画した道を歩むのか。
開業から20年、顧問先の時間外労働の上限規制など働き方改革への対応に奔走している当事務所にとって、この選択は開業30年へ向けた試練の1つに加わりそうである。
久井労務管理事務所 久井 貴弘【福島】
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